主の敵(新かちかち山)復讐の正義とはいずれにあるでしょうか、友を殺したあいつが憎い、でもその憎いあいつにも友がいるのです、 友を殺したあなたは次は憎まれる立場です。 復讐と憎しみの連鎖は無限に続く修羅の鎖、 果てしない憎悪の先にあるものは共に焼かれて燃え尽きる地獄の炎・・・ 第3章 主の敵 妻を亡くして悲しむ銀狐に2匹に飼われていた人間のポン太が言います。 「銀狐様のお怒りはもっともです、きっとこの私が敵をとって見せましょう」 「そなただって人間であろう、性悪な人間に何がわかる・・・」 「いいえ私は銀狐様の田畑を荒らしたりはしません、玉藻様を失われた銀狐様の悲しみはよくわかります」 「ぜひ私を敵討ちに行かせたください」 銀狐はポン太が敵討ちに行くのを許しました、 ポン太の計画は騙して娘達をこの屋敷に連れてきて屋敷ごと焼き殺してしまおうというものでした、 銀狐は屋敷の裏の祠に隠れそっとその様子を覗いていました。 やがてポン太は「銀狐が怒り狂って人間達を皆殺しにすると言っている」「銀狐を殺してしまわなければ大変なことになる」 と人々を焚き付けてミミと若者達を言葉巧みに誘い出しました。 屋敷に着くとポン太は裏口からそっと抜け出し、計画通り屋敷に火を放ちました。 屋敷は見る見るうちに炎に包まれます、やがて炎は逃げ場を失った若者達の身体に燃え移り、 阿鼻叫喚の叫び声を響かせます、若者達は生きたまま焼かれ地獄のような光景が広がっていきます、 炎を纏い狂ったように踊りまわる若者たちはやがて焼け焦げた黒い人形へと変わり果てていきます、 一人二人と動かない塊へと化していく仲間達と屋敷内を逃げ回りミミはいつの間にか一人ぼっちになっていました。 炎に追われ中庭に出たミミはそこに井戸があったことを思い出しました、 やがてミミの体にも炎が移り身体をじわじわと焼いていきます、ミミは慌てて井戸へと飛び込みました。 井戸は水で満ちていてその水脈は近くの小川へと続いていました、ミミは大火傷を負って命からがら逃げだしたのでした。 それを知ったポン太はミミを討ち漏らしたことを悔しがり、「次こそはきっと敵を討って見せる」と言いました、 銀狐は言います、 「あの娘のことはともかく、われは人間が憎いわけではないのじゃ、われの田畑を荒らしたりしなければそれでよい」 「銀狐様、玉藻様を殺されたのを忘れてしまわれたのですか、 人間は飢えればまたあなたの田畑を荒らします、そしてやがてはあなたを殺そうとする」 そう言ってポン太は次の復讐を誓うのでした・・・ 続く・・・ |